上七代下七代
今日は父の日法要を執り行いました また このお寺のために理事として尽くしてくれた方々のため そして先週の日曜日 2016年6月12日にフロリダ州オーランドで凶弾に倒れた50人の犠牲者にも回向しました なぜこのような事件が起きたのかわかりませんが このような形で大切な人の命が奪われることが私は許せません 犠牲者の方に心からの哀悼の意を表したいと思います
今回の悲劇の原因は何かといろいろな報道がされています 犯人の同性愛者に対する嫌悪の感情によるものとイスラム国の兵士としてテロ事件を起こしたという2つの説が大方の見方のようです 仮にその二つの理由が正解であったとしても 私には50人もの人を殺し 53人もの人にけがを負わせることは理解できません 直接的犠牲者は50人であったかもしれませんが 間接的に犠牲者となった方は一体何人になるのか想像もつきません それは 犠牲者一人一人に親がいて 兄弟がいて 配偶者がいて 子供がいて 親戚がいて 友人がいたはずです 自分の身近な人がこのような形で犠牲となった場合 その関係者も一生大きな悲しみを背負うことになります そして 何より気の毒だと私が思うのは 犯人には幼い息子がいることです この息子は 何にも落ち度無くして殺人犯の息子として一生を過ごさねばなりません 将来就く職業や結婚やその他多くのことで障害にぶつかることでしょう もちろん 犯人の妻や両親も同じ目にあうことになると思います つまり 一つの犯罪が起きると 被害者加害者を問わず多くの人が犠牲となると言えるのです やむを得ない理由がある場合もあるかもしれませんが 一つの犯罪が多くの人を傷つけることを理解すべきだと思います 何かを起こす前に 特に最も大切で愛すべき家族を巻き添えにすることをまず最初に私達は考えなければなりません
仏教において 殺人はどのように考えられているのでしょうか 仏教には最も基本的な教えとして五戒や十戒などというものがありますが その中に殺人に関するものはありません 驚くかもしれませんが 事実です では 仏教は殺人を認めているのかというと それは違います そんなことはありません ではどのように定められているかというと 不殺生という形で戒められています 不殺生とは 生きとし生けるものを殺してはならないということです つまり 人だけではなく動物も植物も殺してはならないということなのです 殺すということにおいて 人も動物も植物も同等に扱われているところが特徴的で 仏教の特色がよく出ていると思います この戒めは 五戒でも十戒でも一番最初に説くことで特に重要視されていることがわかります
ここで誤解のないようにお話ししますが 私達は毎日食べ物を食べて命を長らえています 日々 動物や植物の命を犠牲にして生きているのです この事実は先ほどの仏様の教えと一見矛盾するように見えます 仏様の教えをそのまま実践するのであれば 何も食べないで餓死するしかないと考えるかもしれません しかし 仏様は 私達が自分の命を大切にして 力強く生きて行くことも一方で求められています ですから 本来殺してはならない動物植物を犠牲にして私達が生きることは避けられないこと仕方のないことと考えます だから 犠牲になったものに追悼と感謝を込めて お題目をお唱えし「あなたの命をいただきます 」と言ってから食事を摂りますし 残したり無駄にすることのないように気を付けなければなりません ですから 仏様の教えで 命あるもの殺してはならないということは 私達が生きて行くためにどうしても必要なものを除いてと理解して下さい オーランドでの50人もの殺人は 私達が生きて行くためにどうしても必要なものでは当然ありません 仏教においても許されざるものであることは間違いありません
仏様の教えで 殺人においてもう一つ有名なものに五逆罪というのがあります これは 仏教における最も重い罪として考えられているもので 1)母親を殺すこと 2)父親を殺すこと 3)聖者を殺すこと 4)仏様を傷つけ血を流させること 5)仏教教団の和を乱すことです 両親を分けて それぞれ殺してはならないと戒められていることに 親子の縁について重視されていたことがうかがえます
日蓮聖人は そのお手紙の中で よく上七代下七代ということを言われています 特に縁の深い家族として過去七代の先祖と未来七代の子孫について説かれているのです フロリダの犯人はどのような理由によって あるいはどのような縁によって犯行に及んだのかわかりませんが 上七代下七代の家族に大変な迷惑をかけたと言えます 日蓮聖人は お題目をお唱えすれば 自分の悪いカルマが浄められ幸せになれるだけでなく 上七代下七代の家族も救われ幸せになることができると教えられています 皆さんには 自信と喜びを以てお題目をお唱えして欲しいと思います
2016年6月19日