松葉ヶ谷雁信

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母の日

今日は 母の日法要並びに婦人会物故者の追善法要を営みました

私は昨年まで6年にわたりカリフォルニア州ヘイワード市にある開教布教センターに勤務しておりました そこでの仕事の一つは 各地の教会に出向いて研修を行うことでした ですから いろいろな国のビザを取得しなければなりませんでした その中で印象深かったのは ブラジルのビザ取得時のことです

ビザ申請書にいろいろなことを書き込まなければならないのですが その中に両親の名前を尋ねる欄がありました そして その名前の欄の隣に不明の場合にチェックするところがありました つまり ブラジルに入国を希望する人の中には それなりの割合で両親の名前がわからない人がいるということであり そのようなことを普通のこととして申請書が作られていることに驚いたのです お気の毒なことだと思いますが アメリカや日本などの国でも親の名前を知らない人がいると思います しかし全体からみれば それほど多い割合ではないと思います 私は親がいてその名前がわかるということは 気にしたことがないほど当然のことでしたが 幸せなことなのだと気が付いたのです

皆さんの中で時代劇がお好きな方も多いと思います 今はどうか知りませんが 昔はキクテレビでよく放送していました 特に人気のあったもののひとつに水戸黄門があります 水戸黄門は 徳川光圀という実在の人物をモデルにしたドラマです この水戸光圀は親孝行で有名な人でした お母様が亡くなられた後 自分の誕生日には決して豪華な料理を食べることなく 粗末なもので過ごされたそうです 殿様であり どんな贅沢なものでも食べられる力とお金があったのに何故そうされなかったのでしょうか それは 誕生日はおめでたい日かもしれない しかし お産の大変さを考えると母親を最も苦しめた日とも言える 母親を思い その苦労を考えると 一年中でせめてこの日だけでも贅沢をしないで粗末な料理でその恩に感謝したいと考えられたようです 素晴らしい話だと私は思いました 水戸光圀のお母様は名前を久といい 日蓮宗の信徒としても有名な方でした そのため 亡くなられた後 お寺を創建しその菩提を弔いました そのお寺は日蓮宗の本山の久昌寺で 現在も立派なお寺として有名です

ところで 人は誰しも自分が一番大切です もし自分よりも大切なものがあるとすれば それは子供かあるいは孫となります しかし 何故子供や孫が自分より大切なのかを考えると それは自分の血を受け継いだものであり 自分の分身と思うからだといわれています そして 自分を生んでくれた母親は またとても大切な存在となります 母親が生んでくれなければ自分はこの世にいないのですから当然といえます

ここで私は一つ疑問に思うことがあります それは 母の日は母親に感謝を捧げる日です 感謝を捧げるのは 自分の母親のみなのでしょうか 母親は 自分を生んでくれたから大切 それはその通りです 母親がいなければ自分はこの世に存在していません では母親を生んでくれたその母親 (つまり自分から見れば祖母になりますが )はどうでしょうか 自分が生まれるためには 母親が必要だった その母親が生まれるためには 祖母が必要となります 祖母が生まれるためには曾祖母が必要となります つまり 自分がこの世に生まれることができたことを喜んで母親に感謝をするならば 自分を生んでくれた母親に感謝するのは当然のこととしても 代々にわたって生んでくれたその母親たち全てに感謝すべきではないかと思うのです なぜなら その内一人欠けても自分は生まれてこなかったのですから このように考えると 多くの人に感謝するのが母の日の正しいあり方と思いますし その意味で法要を営む理由が明らかになると思います つまり 自分が生まれてくることを可能にしてくれた多くの亡くなった母親に感謝を表すために法要を営み 回向するということです 普通は 自分の母親 祖母 曾祖母ぐらいまでしか名前はわかりません しかし それ以前にも必ず母親はいました 名前のわからない母親の方が多いといえます このように考えてくると 名前がわかるわからないは どれほど大切な問題かわからなくなります ですから 仮に母親の名前がわからなくても 感謝することは大切で その気持ちを表すために法要にお参りすることはできます 新しくお寺を一つ建てることは不可能でも 法要にお参りして感謝の念を捧げることは難しくありません 母の日法要は 母親を亡くした人だけがお参りするものではありません 生みの母以外にも私達には多くの母親がいます 例えば 義理の母 育ての母 祖母 曾祖母などです ですから母の日法要は 全ての人がお参りすべきものと思います 来月の父の日法要と併せてお参り下さい そして ご家族に 何故お参りしなければならないのかを説明して下さい

2014年5月11日